研究概要 |
ギャップ結合による細胞間シグナル伝達は排尿機能において重要な役割を持っていると思われる。このため、ラット排尿磯能障害モデルを作製し、膀胱排尿筋でのギャップ結合変化を解析した。排尿障害モデルは、Partial Bladder outlet obstruction (P-BOO)モデルと糖尿病モデルを作製した。これらのモデルでの排尿筋におけるギャップ結合変化と尿流量力学的変化の関係を解析した。解析はモデル、作製後、2,4,8週と経時的に行った。P-BOOでは時間の経過とともに排尿筋圧は低下し、8週目では排尿筋圧は消失していた。同時にこれらの排尿筋でのギャップ結合変化を解析した。電子顕微鏡での観察、その責任タンパクであるConnexin-43(Cx-43)についての免疫組織染色・Western解析を行った。すると、時間の経過ともにギャップ結合は減少していった。免疫組織染色では、コントロール、排尿筋圧に変化がないP-BOOではCx-43は細胞膜に発現を認めた。しかし、排尿筋圧消失の8週では、Cx-43の発現は細胞膜ではなく、細胞質に発現し局在の変化が認められた。ギャップ結合の減少とCx-43の局在変化によりギャップ結合を介した細胞間シグナル伝達の破綻が生じているものと思われた。このことは、排尿機能障害の原因の一つの可能性が示唆された。さらにWestern解析では、時問の経過とともにCx-43タンパクの発現増加を認めた。一方、糖尿病モデルラットも作製し、同様な研究を行った。これでは尿流力学的変化は認めず、膀胱容量、重量が代償的に増大していた。この糖尿病モテルの排尿筋ではギャップ結合、Cx-43の変化は認められなかった。最近MAPKとギャップ結合の関連が示唆されており、MAPKの解析も行った。BOOモデルではMAPKが活性化されており、mechanical stressによるMAPK活性化がギャップ結合変化を引き起こし、排尿筋不全が起こる可能性が示唆された。
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