研究概要 |
(1)MXRの482番目のアミノ酸がRからGまたはTに変異するとmitoxantroneやdoxorubicinに対する耐性度が増加することが知られている。MXRを過剰発現するMCF-7 AdVp3000細胞から調整した膜小胞はATP依存性にleukotrien C4 (LTC4)を小胞内に取り込むことは既に報告したが,この細胞は482GのMXRを発現する。そこで,482番目のアミノ酸をglycine (482G)またはthreonine (482T)に変異させたMXR遺伝子,およびwild-type (482R) MXR遺伝子を導入したHEK-293細胞から膜小胞を調整し,同様の検討を行った。 (2)482G,482Tおよび482R膜小胞はいずれもATP依存性にLTC4を取り込んだ。482T膜小胞による取り込みが最も多く482Gと482Rによる取り込みは同程度であった。MXRがGS-Xポンプ活性を有し、482番目のアミノ酸変異がLTC4輸送活性に関与している可能性が示唆された。しかし,これらの細胞にはMRP4などのGS-Xポンプが共発現しており,真にLTC4がMXRの基質であるかどうか,さらに検討をすすめている。 (3)腎細胞癌患者17例から,手術により摘出された癌組織を用いて,RT-PCR法により,MXRmRNAの発現を検討した。17例中8例では正常腎組織についても検討した。正常腎組織ではMXRmRNAの高発現がみられたが,腎癌組織では17例中4例にのみ発現をみとめ,いずれも正常腎レベルと同等,または低発現であった。腎癌ではMDR1やMRP1などのABCトランスポーターが高頻度に発現しており,MXRが臨床での薬剤耐性に関与している割合は低いと思われるが,MXRを含めたABCトランスポーターの発現プロファイルの解析により,適切な薬剤選択が可能となると思われる。
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