研究概要 |
ジギタリスによる正常近位尿細管,腎癌,前立腺癌細胞株の生理学的反応,腎癌細胞におけるNa, K-ATPaseの発現を検討した。ウアバイン添加による各種培養細胞(前立腺癌細胞としてPC-3,DU-145,LNCaPを、腎癌細胞としてCaki-1,KU19-20を使用)の増殖性変化をアラマーブルー染色による色素還元法にて検討し、10〜200nM範囲で増殖抑制効果が認められことが確認された。この増殖抑制効果はFITC-dUTPを用いたTUNEL法によりアポトーシス誘導によるものと確認されたが、各濃度間でのアポトーシスの比率に優位な相関が認められるには至らなかった。生体でのジギタリス治療投与濃度である10nMでの増殖抑制効果はいずれも10%前後であり、単独投与での治療応用には限界があるもと考えられ、今後多剤併用による相乗効果なども検討が必要であると考えられた。 腎癌患者よりのprimary cultureでは正常近位尿管細胞としてTMUK-01,-02,-03,-04,-05,-06,-07の7系,癌細胞としてTMUR-04,-05,-06,-07の4系のprimary cultureに成功した。近位尿細管細胞であることは尿細管のレセプター介在エンドサイトーシスに関わるmegalin, cubilinの発現をRT-PCR法にて確認した。megalin mRNAはすべての細胞で確認できた。しかし、凍結保存により増殖活性が著しく低下し、BrdU標識による細胞増殖能評価が不可能であった。現在新たな手術検体より初代培養を行っているが、今後実験方法の再検討が必要であると考えられた.また正常腎および腎癌組織におけるNa, K-ATPaseの局在を手術検体(パラフィンブロック)を用いて免疫組織学的手法で検討を試みたが正常腎皮質および癌組織ともに発現が認められず評価不可能であった。これはパラフィン材料・使用抗体などに問題があると考えられ、今後凍結組織を用いた実験を準備中である。
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