下部尿路平滑筋の自動運動に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15591704
• 研究機関: 名古屋市立大学
• 研究代表者: 橋谷 光 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (10315905)
• 研究分担者: 鈴木 光 名古屋市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80037548)
• キーワード: 平滑筋 / 自動運動 / 過活動膀胱 / 間質細胞 / 細胞間情報伝達 / ギャップ結合 / 細胞内カルシウム / 活動電位

研究概要

膀胱平滑筋の自発活動の機序
膀胱平滑筋において自発収縮、細胞内カルシウム濃度変動、膜電位変化を同時測定しその関係を検討した。自発収縮は活動電位に伴う細胞内カルシウム濃度上昇によって起こり、活動電位の持続時間や振幅あるいは頻度を増加させる薬物は活動電位の変化に対応して収縮反応を増強し、一方活動電位を抑制する薬物は収縮反応を抑制した。サイクリックAMPおよびGMPを活性化薬は電気現象やカルシウム濃度変動に影響を与えずに自発収縮だけを抑制した。同様の現象はRhoカイネース抑制薬によっても見られ、膀胱の自発収縮は活動電位によって引き起こされるがRhoカイネースの活性化による収縮蛋白のカルシウム感受性増加が収縮の程度に関わっており、この経路がサイクリックAMPおよびGMPにより阻害される可能性が示された。
膀胱の間質細胞とギャップ結合の役割
間質細胞の分布をc-kit抗体による免疫蛍光染色により調べたところ、間質細胞は膀胱平滑筋線維束外側、筋細胞間および筋線維束間に広く分布していた。間質細胞のカルシウム濃度変動は平滑筋とは同期しておらず、低頻度で穏やかな時間経過を持って起こりカルシウムチャネル拮抗薬に抵抗性であったので、膀胱における間質細胞が消化管の同種の細胞のようにペースメーカー細胞である可能性は低いと考えられた。自発カルシウム濃度上昇は筋線維束の両外側より起こり対側に伝搬し、ギャップ結合阻害薬やイノシトール3リン酸によるカルシウム遊離阻害薬(2-APB)で阻害されたが細胞内貯蔵部位の機能を阻害する薬物ではカルシウム伝搬は抑制されず、また2-APBは電気的細胞間連絡をも阻害した。カルシウム伝搬はカルシウムチャネル阻害剤によっても抑制されたので、膀胱平滑筋間の興奮伝達はギャップ結合を介した電気的連絡とこれを促進するカルシウムチャネルの自己再生的性質によって起こること考えられた。

研究成果

• [文献書誌] H.HASHITANI, H.SUZUKI: "Identification of interstitial cells of Cajal in corporal tissues of the guinea-pig"British Journal of Pharmacology. 141. 199-204 (2004)
• [文献書誌] H.HASHITANI, A.F.BRADING, H.SUZUKI: "Correlation between spontaneous electrical, calcium and mechanical activity in detrusor smooth muscle of the guinea-pig bladder"British Journal of Pharmacology. 141. 183-193 (2003)
• [文献書誌] H.HASHITANI, A.F.BRADING: "Electrical properties of detrusor smooth muscles from the pig and human urinary bladder"British Journal of Pharmacology. 140. 146-158 (2003)
• [文献書誌] H.HASHITANI, A.F.BRADING: "Ionic basis for the regulation of spontaneous excitation in detrusor smooth muscle cells of the guinea-pig urinary bladder"British Journal of Pharmacology. 140. 159-169 (2003)
• [文献書誌] Y.KUBOTA, H.HASHITANI, H.FUKUTA, H.KUBOTA, K.KHORI, H.SUZUKI: "Role of mitochondria in the generation of spontaneous activity in detrusor smooth muscles of the Guinea pig bladder."Journal of Urology. 170. 628-633 (2003)