研究概要 |
ホルモン抵抗性前立腺癌(HRPC)におけるリガンド非依存性アンドロゲンレセプター活性化にいくつかのgrowth factor receptor tyrosine kinaseが関与しているという研究が散見されるが、実際に前立腺癌(PC)細胞内においてそれらgrowth factor receptorによりアンドロゲンレセプター(AR)のリン酸化が亢進しAR活性が上昇している事を示した報告はない。本研究で私たちはHer2/Neu tyrosine kinaseを強発現させたDU-145細胞ではその細胞内でARとMAP kinaseのリン酸化が亢進し、またHer2/Neu阻害剤であるTAK165によりそれらのリン酸化およびHer2/Neuにより亢進したAR活性が阻害される事を初めて示した。EGFR阻害剤であるZD1839(Iressa)もTAK165と同様にHer2/Neuで活性化されたAR活性をPC-3,DU-145細胞において阻害し、これら薬剤はホルモン抵抗性前立腺癌(HRPC)の治療に有効である可能性が示唆された。Her2/NeuによりARのどのドメインが活性化されるかをtruncated ARを用いたレポーターアッセイにて検討したところ、ARのN末側のホルモン非結合領域であるAF1+DBD領域の転写活性がHer2/Neuの強発現により上昇しTAK165によりその亢進は抑制されたが、リガンド結合領域を含むドメインであるAF2+DBDではHer2/Neuの強発現では活性は上昇しなかった。すなわちHer2/NeuはARのN末側のホルモン非結合領域を介してARの活性化にかかわり、このホルモン非依存性のAR活性化をTAK-165は阻害している事を示している。
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