研究概要 |
【目的】腎癌細胞におけるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の抗腫瘍メカニズムとアテソウイルスレセプター(CAR)の関係を検討した。 【方法】ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるFR901228で処理し、細胞増殖、細胞周期プロファイルの変化やアポトーシスの有無を検討した。また、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による腎癌細胞のcoxsackie and adenovirus receptor(CAR)発現量をFACSとRT-PCRを用いて検討した。FR901228で処理した腎癌細胞株とp53アデノウイルスベクターによる治療効果をin vivo, in vitroで検討した。 【結果】フローサイトメーターでの腎癌細胞株のCAR発現はVMRC-REW:60%,A-498:9%,Caki-1:8%,ACHN:13%であった。0.01〜0.5ng/mlのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤で処理した腎癌細胞のCAR発現効果は、フローサイトメーターやRT-PCR法にてヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の濃度に比例してCAR発現量が増加していた。0.5ng/mlのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤で処理した腎癌細胞のadCMV-β-galの感染効率は5〜8倍増強していた。至適濃度でのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を用いた場合、adCMV-p53単独より、約1/5以下の力価で同じ治療効果を認めた。 In vivoでは、腫瘍が約160mm^3になってから、ヒストン脱アセチル化に腫瘍に注入、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤静注とadCMV-p53腫瘍に注入をした場合を比較した。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とadCMV-p53で治療した腫瘍は明らかに有意に縮小傾向が認められた。 【結論】ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤は、腎癌細胞のCAR発現を増加させる作用を認めた。アデノウイルスをベクターとする腎癌に対する遺伝子治療の効率を改善させるために、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が有効である可能性を示唆される。
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