研究課題
基盤研究(C)
サイトカインのシグナル伝達に関連した転写因子に着目して腎細胞癌の細胞生物学的特徴を明らかにした。一連の研究は腎細胞癌が頻繁に発熱や白血球増多症を伴い、サイトカイン産生性腫瘍であるという臨床的特性に対する分子基盤を与える研究と位置づけられる。腎細胞癌の組織においてはNF-κBの活性化は腫瘍の進展や転移と関連すること(Oya M et al : Carcinogenesis 2003)、CCAAT/enhancer binding protein(C/EBP)の活性化は腎細胞癌においてはβサブタイプに依存していること(Oya M et al : Clin Cancer Res 2003)を示した。これら2つの転写因子の活性化は癌の悪性度や浸潤と相関するのに対し、Activator protein 2(AP-2)は逆に早期の腎細胞癌に有意に活性化が見られることを示した(Oya M et al : Urology 2004)。さらに腎細胞癌のアポトーシスの誘導機構を利用して治療への応用を試みた。Mitogen-activated protein kinase(MAPK)とphosphatidylinositol-3-OH kinase(PI3K)-Akt経路の意義を中心に解析した。MAPKは主にERK,JNK,p38の経路に分類される。腎細胞癌においてはJNKの活性化を負に制御するフォスファターゼであるMKP-1の発現の亢進が存在し、JNKの活性化はすみやかに抑制されること、JNKの活性化を持続させることにより腎細胞癌においてアポトーシスが誘導されることを示した(Mizuno R et al : J Urol 2004)。また、プロテアソーム阻害剤が腎癌細胞にアポトーシスを誘導することを示した(Ishizawa J et al : Int J Oncol 2004)。PI3K-Akt経路の解析では免疫組織化学的手法にてAktの活性化が腎細胞癌の予後不良因子であることを示した(Horiguchi A et al : J Urol 2003)。これらの成果は分子標的治療への応用が期待される。
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