研究概要 |
膀胱癌は,表在性の早期癌と浸潤性の進行癌に大別できる。我々はこの2つの癌の違いが,中心体過剰複製により生じている可能性があると考えている。中心体過剰複製が生じることにより,染色体不安定性(Chromosomal instability)がおこり癌はより浸潤能を高めていく。95%以上の膀胱早期癌では中心体の複製は保たれており,染色体数も安定している。ところが,約70%の浸潤性膀胱癌では中心体過剰複製が生じ,同時に染色体不安定性が生じていることを我々は明らかにしてきた。 今回の研究の目的は,膀胱癌において中心体過剰複製の発生機序を明らかにすることにある。中心体過剰複製が生じている膀胱癌細胞株と中心体複製が正常である膀胱癌細胞株との比較において、p53の異常とサイクリンEの過剰発現が関与している事を明らかにした。臨床検体においては、免疫染色でp53とサイクリンEの過剰発現が同時に生じた時に中心体過剰複製が生じる事を見出した。さらに、中心体複製が保たれている膀胱癌細胞株を用いて、サイクリンEを過剰発現、さらにwild type p53の発現をノックダウンさせるという実験系を用いて検討した。その結果、中心体複製が保たれている膀胱癌細胞株に著しい中心体過剰複製が生じる事を確認した。 すなわち、膀胱癌の中心体複製をコントロールする経路として、p53を上流としサイクリンEを下流とする経路が重要である事が確認できた。
|