研究概要 |
今回の研究で我々は、中心体複製制御にかかわる、以下の点を明らかにした。 1、膀胱がんにおいてp53の異常が単独に生じても中心体複製制御は保たれる。また、G1/Sで中心体の複製の開始とDNAの複製の開始を同調する働きのある、サイクリンEの過剰発現においても中心体複製制御は保たれる。ところが、p53の異常とサイクリンEの過剰発現が同時に生じたときに、中心体過剰複製と染色体不安定性が生じる。すなわち、中心体に存在するp53の異常とサイクリンEの過剰発現が癌化(癌の悪性化)に強く関与していることを今回明らかにした。 2、中心体複製制御の異状は癌化に重要であるだけではなく、がん細胞に放射線を照射した時中心体過剰複製が生じ、細胞は分裂死へと導かれるという現象が生ずることを明らかにし、そのメカニズムを報告した。すなわち、膀胱がん細胞株は放射線照射24時間目以降にG2停止となった細胞に中心体過剰複製が生じ、その結果,細胞分裂の障害,多倍体化,細胞分裂死が生じた。ヒト線維芽細胞ではG1/G2停止が生じたが、G1またはG2に停止したまま細胞周期は進行せずに細胞死へと導かれた。がん細胞とヒト線維芽細胞では、放射線に対する反応が違い、G1停止をコントロールする遺伝子が重要な役割を担っている可能性が示唆された。
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