ゴナドトロピン受容体とTSH受容体はロイシンリッチリピートを有する細胞膜7回貫通型受容(LGR)である。本研究ではこれらの受容体と相同性を持つ受容体LGR4、LGR5、LGR6、LGR7、LGR8に関する研究を試みた。LGR4、LGR5、LGR6はオーファン受容体である。受容体のリガンド結合による細胞膜発現を確認できないため受容体蛋白のN末端細胞外領域にM1エピトープを付加し発現ベクターに組み込み293T細胞にトランスフェクションすることでM1抗体により細胞膜に発現することを確認した。LH受容体で恒常的活性化を引き起こすアミノ酸変異を何種類か導入した受容体はcAMP産生に関してはベースラインの上昇は認められずセカンドメッセンジャーの候補はいまだ不明である。子宮内膜を用いてLGR4とLGR5の発現をRT-PCRにより確認できた。リラキシンの生物活性を測定するアッセイ系の確立のために293T細胞にLGR7受容体とcAMPに反応するルシフェレース蛋白発現ベクターを共発現させ、リラキシンによる反応性を見たが反応が非常に悪く臨床検体を用いてリラキシンの生物活性を簡便に測定できるアッセイ系は確立できなかった。卵巣、顆粒膜細胞、子宮内膜、筋腫、卵管、絨毛を用いてリラキシン、INSL3、LGR7とLGR8の発現をRT-PCRで調べた。リラキシン、INSL3はすべての細胞で発現を認めた。一方、それらの受容体LGR7は子宮内膜のみに認められたが、LGR8はいずれの組織においても認められなかった。精巣組織を用いて同様に調べてみた。TESEにて採取された精巣組織を用いてRT-PCRを行った。リラキシン、INSL3は精子の有無にかかわらず発現を認めた。LGR7も同様であったが、LGR8は精子がない場合には発現は認められなかった。LGR8の発現の有無で精子の有無が予測できる可能性が示唆された。
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