研究概要 |
1)子宮、卵巣のトキソプラズマに対する感染抵抗性の妊娠による変化 (1)妊娠マウスの子宮のparasitophorous vacuole数は非妊娠マウスに比べ、34.3倍有意に高値であった(p=0.0003,Mann-Whitney U-test)。 (2)妊娠マウスの卵巣のparasitophorous vacuole数は6.1±11.3で、非妊娠マウスは0であった(p=0.0014,Fisher's exact test)。 (3)トキソプラズマは経口的に感染すると、腸管から侵入し門脈を経て肝臓に到達し、次に血流を介し全身の臓器に播種する。すなわち、肺、心、子宮、卵巣は感染巣として同様の条件と考えられる。ところが妊娠マウスの肺、心のparasitophorous vacuole数は非妊娠マウスに比べ、それぞれ3.8倍、2.2倍で子宮に比し低値であった。 妊娠により子宮は、他臓器に比べ特異的に著明にタキゾイドが集積する。 2)サイトカイン(IFN-γ,IL-2,IL-4,IL-6,IL-10) 感染抵抗性の差違の機序の解明のため、血清中サイトカインを測定した。感染7日後、妊娠マウスは有意に血清IFN-γ濃度が非妊娠マウスに比べ高値であった(p=0.0496,Student's t-test)。しかしそれ以外の血清サイトカインおよび脾細胞培養上清中のすべてのサイトカインは、妊娠、非妊娠マウス群で有意差を認めなかった。したがって腸管および子宮局所のリンパ球のサイトカイン産生能を次年度に検討する必要がある。 3)トキソプラズマIgG抗体のアビディティの測定 感染時期の推定可能な症例のアビディティを測定したところ、感染後4カ月以内の10症例は、すべて10%未満であったが、感染後1年以上の症例のアビディティは平均30%と高値であった。アビディティの測定が妊婦のトキソプラズマ初感染時期の推定に有用であることが示された。
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