研究概要 |
(1)サイトカイン(IFN-γ,IL-2,IL-4,IL-6,IL-10) 感染抵抗性の差違の機序の解明のため、マウス血清中サイトカインを測定した。感染7日後、妊娠マウスは有意に血清IFN-γ濃度が非妊娠マウスに比べ高値であった(p=0.0496,Student's t-test)。しかしそれ以外の血清サイトカインおよび脾細胞培養上清中のすべてのサイトカインは、妊娠、非妊娠マウス群で有意差を認めなかった。したがって腸管および子宮局所のリンパ球のサイトカイン産生能を今後検討する必要がある。 (2)トキソプラズマIgG抗体のアビディティの初感染時期による推移(標準曲線)の作製 短期間にトキソプラズマ抗体の陽転が確認された妊婦、あるいはトキソプラズマ抗体が4倍以上上昇した妊婦など、感染時期が推定される症例の血清28検体につき、アビディティを測定した。r=0.91で有意な強い正の相関を示した。感染4カ月以内と推定される13検体は全例AI (avidity index)が10%未満であり、これより、AIが10%未満を4カ月以内の初感染の可能性が高い急性感染状態とした。過去にトキソプラズマ抗体を測定し陽性と診断された別の28例につき陽性持続期間とAIの関係をみた。陽性持続期間は36.3±18.4カ月(平均±標準偏差、以下同様)で、範囲は13〜84カ月であった。AIは、横這いで持続期間と相関はなく、39.1±6.9%であった。最小持続期間の13カ月の症例のAIは23.1%であり、20%以上を慢性感染状態と定義した。現時点では、症例数が十分とはいえないため、AIが10%以上、20%未満を判定保留と定義した。 (3)トキソプラズマIgM抗体陽性妊婦管理のガイドラインの作製 自験例も含め、全国からご依頼いただいたトキソプラズマIgM抗体陽性妊婦147例につき、AIを測定した。トキソプラズマIgG抗体とAIは相関を認めず、トキソプラズマIgG抗体値と感染時期に相関がないことが示された。「プラテリアIIトキソIgM^<【○!R】>」とAIに強い相関を認めず、91.8%が慢性感染状態と診断され先天性トキソプラズマ症の可能性が非常に低いことを説明し、無用な中絶や薬剤投与、羊水診断を避けることができた。出生児も先天感染を認めなかった。
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