研究概要 |
高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頚癌の発生を誘発することが明らかになってきた。したがって、HPVに対して有効な免疫を誘導することが感染防止や将来の癌発生防止に有効であると考えられている。米国のグループがHPV16型のウイルス様粒子(VLP)をワクチンとして免疫したところ、100%その感染は抑えられたと報じられた。このワクチンは注射ワクチンで、精製したウイルス様粒子を計3回の注射を行っている。効果はみとめられたが、このワクチンは単価が高く、また、低開発国など医療設備が充実していない地域においての注射投与には問題点が多い。HPVは粘膜に感染するため、実際は粘膜免疫を誘導することが最も効率のいい方法である。実際、ウイルスVLPの注射投与では、粘膜にウイルス特異的なIgAは誘導されないと他のウイルスで報告されている。そこで、我々はHPV16型様粒子を産生する酵母を経口投与し、粘膜にHPV16型特異的な抗体を誘導することを試みた。経口投与単独ではHPV抗体は誘導されなかったが、微量のHPV16-VLPを経鼻的に投与したところ、中和能を有すると思われる抗体が誘導された。本研究では、これまでの研究を発展させ、HPV16型感染の防御のみならず、HPV16型特異的なキラーT細胞を誘導し、治療を目的としたワクチンの作成を試みた。S.pombeの発現ベクターにHPV16L1-E7(L1を短くしたC-末に全長のE7を導入したもの)を組み込んで発現させたところ、57kD,63kD,67kDの蛋白発現に成功した。
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