研究課題/領域番号 |
15591736
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
村上 弘一 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (20242555)
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研究分担者 |
井上 正樹 金沢大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10127186)
生水 真紀夫 金沢大学, 医学部附属病院, 助教授 (30226302)
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キーワード | 子宮内膜症 / ドラッグデリバリーシステム / ダナゾール / アロマターゼ / 局所療法 |
研究概要 |
平成15年度(第1年次)は研究実施計画に沿って以下の実験を行った。 子宮内膜症由来培養細胞の細胞増殖能に対する薬剤の影響を検討し、ダナゾール(10^<-5>M)に細胞増殖抑制作用をみとめた。このダナゾールの効果は、男性ホルモン受容体拮抗剤およびグルココルチコイド受容体拮抗剤で一部抑制された。内膜症病巣局所でのエストロゲン産生が細胞増殖に及ぼす影響を検討し、内膜症由来細胞がエストロゲンを合成し、子宮内膜上皮の細胞増殖を促進している事を共培養システムを用いて証明した。アロマターゼ阻害剤は内膜症由来細胞のエストロゲン合成阻害を介して子宮内膜上皮の細胞増殖を抑制した。ダナゾールはアロマターゼに拮抗阻害剤として作用し、エストロゲン合成を抑制した。さらに、局所のエストロゲン合成をマクロファージより分泌されるインターロイキン1β(IL-1β)が促進し、この効果の発現機構に核内転写因子であるNF-kBが関与する事を明らかにした。このIL-1βで促進されるエストロゲン合成はダナゾール、アロマターゼ阻害剤、COX-2阻害剤、NF-kB活性化阻害剤、デキサメサゾン(DEX)で抑制されることから、これらの薬剤の局所投与が子宮内膜症に有効であることが示唆された。 子宮内膜症病巣に持続的に有効濃度の薬剤を放出するドラッグデリバリーシステムとしてヒアルロン酸に化学架橋を加え、ダナゾールを含有させた生体内分解性ゲル(HAゲル)を作成した。HAゲルはヒアルロニダーゼ水溶液中で一定速度で分解され、分解速度はゲルの含水率を変化させることで調節可能であった。また、分解されたゲル重量に一致してダナゾールが水溶液中に放出された。 ラット子宮内膜を腹壁に自家移植して作成した子宮内膜症モデルの嚢腫中にHAゲルを注入し、病巣に対する効果を検討した。ゲル注入後、嚢腫径は増大し、2週間目にピークをとったあと縮小した。投与8週間後では、対照群よりも有意に縮小していた。嚢腫組織内のダナゾール濃度は2週間目以降2-20μMで推移したが、血中濃度は感度以下であった。嚢腫内の子宮内膜上皮の組織像においては、HAゲル投与で内膜上皮の著明な萎縮をみとめた。HAゲル投与前後を通して性周期は正常であり、定期的な排卵をみとめた。また、全身的な副作用はみとめられなかった。 以上の内容は、第55回日本産婦人科学会(福岡市)、第48回日本不妊学会(東京都)で発表し、第56回日本産婦人科学会で発表予定である。
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