研究概要 |
1.卵巣癌におけるアンギオテンシンIIタイプ1受容体発現の解析と血管新生因子および予後との相関 本研究課題において初年度(平成15年度)には、子宮頸癌、絨毛癌におけるアンギオテンシンIIによる腫瘍の増殖や浸潤の促進とその分解酵素であるAminopeptidaseA(APA)の発現について解析した。本年度は卵巣癌においてもアンギオテンシンIIが腫瘍進展のkeyとなるペプチドとなり得るか、またこれらの受容体および分解酵素(APA)、産生酵素(ACE)の発現の有無について検討した。 (1)卵巣腫瘍組織99例(良性14、境界悪性18、浸潤癌67)におけるアンギオテンシIIタイプ1受容体(AT1R)の免疫組織染色を施行したところ、卵巣腫瘍細胞のAT1R陽性率は悪性転化に伴い増加した。APAおよびACEは腫瘍細胞には発現せず、間質の血管内皮に発現した。 (2)同一切片を用いてVEGF染色およびCD34染色による腫瘍内血管密度を解析しAT1Rと血管新生の関連を検討したところ、腫瘍内血管密度70以上、VEGF陽性例で発現率が有意に高く、また予後との関連では、AT1R陰性群は弱陽性、強陽性群に比較してover all survival、disease-free survivalが有意に良好であった。(Suganuma et al, Clin Cancer Res, in press) 2.卵巣癌におけるアンギオテンシンIIタイプ1受容体プロッカーの腹膜播種モデルにおける治療効果 卵巣癌細胞株SKOV3を用いてヌードマウスの腹膜播種モデルを作成し、AT1R阻害剤の治療効果につき検討したところAT1R阻害剤の腹腔内連日投与によりin vivoモデルの腹膜播種および腹水産生は有意に抑制され、腹水中VEGF濃度も有意に減少した。(Suganuma et al. Clin Cancer Res, in press) 3.卵巣癌細胞におけるエンドセリン1分解酵素Neutral endopeptidase (NEP)の発現とその意義 卵巣癌細胞にNEPを過剰発現させると培養上清中エンドセリン1濃度が減少しその増殖や浸潤が抑制され、in vivoのマウス移植腫瘍の増殖は減少した。(Kajiyama et al.Clin Cancer Res, in press)
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