【目的】血管新生のinitial phaseに関与するとされているAngiopoietin/Tie2 systemとVascular endothelial cell gorowth factor(VEGF)発現が上皮性卵巣癌の予後に影響するか否かについて検討した。【方法】85例の上皮性卵巣癌卵巣癌を対象とした。患者よりインフォームドコンセントを得て手術時に摘出した腫瘍組織を用い、Angiopoietin-1(Ang-1)、Angiopoietin-2(Ang-2)、Tie2、VEGFのmRNA発現をreal-time quantitative RT-PCRを行い測定した。さらに、抗factorVIIIモノクローナル抗体を用いた免疫染色により腫瘍内の微小血管密度(MVD)を算出した。【成績】1)Ang-1mRNA/Ang-2mRNAratio、VEGFmRNA、Tie2mRNA発現はそれぞれ有意にMVDと相関した(P<0.0001、P=0.024、P=0.005)。Ang-1mRNA/Ang-2mRNAratio、VEGFmRNA、Tie2mRNA発現それぞれの中央値をcutoffとして2つの群に分けた。Ang-1mRNA/Ang-2mRNAratioが低く、Tie2mRNA、VEGFmRNAがともに高い症例は他の症例より有意にMVDが高値であった(P=0.0025)。2)予後追跡期間は2-120カ月(median;24カ月)で、univariate Cox regression analysisでは累積生存率はAng-1mRNA/Ang-2mRNAratioが低い群が高い群に比較して有意に低かった(P=0.010)。また、Ang-1mRNA/Ang-2mRNAratioが低く、VEGFmRNA発現が高い群が他の群に比較して有意に予後が悪かった(P=0.019)。臨床進行期、初回手術時の残存腫瘍の有無、組織学的分化度が有意に予後に影響した(P=0.014、0.042、0.028)。MVDは有意に予後に影響しなかった(P=0.203)3)multivariate Cox regression analysisでは、臨床進行期のみが独立した予後因子で(P=0.035)、Ang-1mRNA/Ang-2mRNAratioは独立した予後因子である傾向が認められた(P=0.061)。【結論】上皮性卵巣癌においてAngiopoietin/Tie2 system、VEGFは血管新生を介さない機構により予後に影響する可能性が示された。
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