研究概要 |
【目的】奇胎絨毛から産生されるDNA(父親由来)を母体血中から検出し、これが全胞状奇胎の続発症発生予知に有用なマーカーとして使用出来るか否かを検討した。その準備段階として絨毛が産生するhCGと胎児DNAが相関を認めるかどうか、そして、各染色体上の多型領域であるShort tandem repeat(STR) markerを用い母体血清中に胎児絨毛由来DNAの検出が可能であるかどうかを目的とした。さらに妊娠28週で分娩した胞状奇胎合併妊婦において母体血中の胎児絨毛由来DNAの検出が可能かさらに臨床的に絨毛性疾患のマーカーとして検出可能かどうか検討した。【対象および方法】男児を妊娠している正常妊婦20名より,血液を採取し血清部分からDNAを抽出し、これによって得られたDNAをY染色体上に特異的なSRY遺伝子領域のプライマーを用いてTaqman法を利用した定量的PCR法を行い検体1mlあたりのY領域のコピー数を検討した。同時に血清中のHCGを測定しその相関を調べた。また、女児を妊娠している妊婦から同様に血清からDNAを抽出し、そのDNAをShort tandem repeat(STR) marker領域の蛍光PCRで増幅し、その増幅産物をDNAシークエンサーに電気泳動し胎児絨毛由来DNAの検出を行った。46,XX女児と46,XY胞状奇胎の合併妊婦の母体血中の胎児絨毛由来DNAの検出をSRY遺伝子領域の定量化し行い、母体血中のβHCGとの相関を調べた。また、分娩後いつまで胞状奇胎由来のDNAが検出できるか検討した。【結果】男児を妊娠している正常妊婦において血清中のHCGとSRY遺伝子濃度は相関関係を認めた。女児を妊娠した症例においても、胎児絨毛由来のDNAが母体血清中に確認された。胞状奇胎合併妊婦から絨毛由来DNAの検出が可能であり。血中のHCGの推移と同様な動きを示した。妊娠20週に時点で絨毛由来DNAは最も高値を示し、分娩後5週まで検出された。【結論】胎児絨毛由来DNAが母体血中に明らかに存在し、検出できることが確認された。また、奇胎娩出後の再発マーカーとして使用されるhCGと相関関係を示すことから胞状奇胎の続発症予知のマーカーとして同様に用いることができる可能性が示唆された。
|