研究課題
基盤研究(C)
近年、妊娠母体血中の胎児細胞が、分娩後や中絶後の長期間にわたって存在することが報告されMicrochimerismと呼ばれている。特に甲状腺疾患を引き起こす原因の一つとしてこの現象が報告されている。われわれは甲状腺疾患患者の血中に胎児細胞や胎児DNAが存在するか否かを目的とて検討した。倫理委員会で承認を得た後、甲状腺疾患でフォロー中の患者のうち書面による同意を得た20歳以上の妊娠中でない女性99名を対象とした。患者末梢血の血清からDNAを抽出した。Microchimerismの指標として、女性には存在しないY染色体に特異的なSRY遺伝子領域のプライマーを用いてTaqman法を利用した定量的PCR法を行い検体1mlあたりのY領域のコピー数を検討した。99名中6名(6.1%)でY領域を含むDNAが検出されDNA量は平均94.78copies/mL(1.28〜336.13copies/mL)であった。正常非妊娠女性ではほとんどみとめられない血中のMicrochimerismが、甲状腺疾患をもつ患者の一部で存在が確認され、疾患との関連が示唆された。また、甲状腺摘出手術を受けた女性患者のうち書面にて同意を得た36人の女性を3群に分け、A群には、少なくとも1人の男児分娩歴がある自己免疫性の甲状腺の病気(バセドウ病、または橋本病)(n=5)もつ女性、B群には、非自己免疫性の甲状腺の病気(n=21)で少なくとも1人の男児分娩歴がある女性、C群には、甲状腺の病気(n=10)をもち男児分娩歴のない女性を対象とした。手術時に無菌下に甲状腺組織を採取した後、手術時に甲状腺組織を採取しスライド標本を作製し、XおよびY染色体特異的プロ-ブを用いて組織FISH法を行った。Y染色体特異的シグナルを有する細胞は、A群において3人(60%)の患者において検出され、B群では10人(47.6%)の患者において、そしてC群では検出されなかった。甲状腺組織中にMicrochimerismが確認された。
すべて 2006 2005
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Hiroshima Journal of Medical Science, 55(1)
ページ: 9-15
Hiroshima J Med Sci 55(1)
Clinical Chemistry 51(3)
ページ: 676-677