研究概要 |
子宮頚癌の約90%にヒト乳頭腫ウィルス(HPV)感染が認められるが、HPV感染者のほとんどは子宮頚癌を発生することはない。また,HPV16あるいはHPV16の転写産物であるE6およびE7のトランスジェニックマウスにおいても子宮頚部病変は異形成にとどまり、浸潤癌は観察されない。そこで、HPV感染と同時に起こっているであろう発癌関連遺伝子の異常が近年重要と考えられ、注目を集めている。われわれはこれまでに種々の発癌関連遺伝子(c-src、c-erbB2、IGF-1)のトランスジェニックマウスを作成し,これらのマウスにおいて皮膚癌,胆嚢癌,前立腺癌などが発生することを明らかにしてきた。 本研究において,われわれは転写因子であるE2F1を過剰発現させたマウス(K5 E2F1トランスジェニックマウス)において子宮頚癌が発生していることを見いだした。同マウスに発生した子宮頚癌組織においてE2F1は過剰発現していることが確認され,また,同マウス作成に使用したプロモーターであるkeratin 5も過剰発現していることが明らかとなった。一般に,良い動物モデルの条件としてはヒトの疾患に類似した性格をもつ必要があるが、このマウスに観察される子宮頚癌は次に挙げるヒト子宮頚癌とのいくつかの類似点を持つことがわかった。(1)病理組織学的に扁平上皮癌である。(2)前癌病変(高度異形成、上皮内癌)が観察される。(3)骨盤リンパ節に転移巣が認められる。これらのことよりK5 E2F1トランスジェニックマウスはヒトの子宮頚癌の良い動物モデルであることが示唆された。
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