研究課題/領域番号 |
15591757
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 裕明 九州大学, 大学病院, 助手 (70260700)
|
研究分担者 |
福嶋 恒太郎 九州大学, 大学病院, 助手 (40304779)
平川 俊夫 九州大学, 大学病院, 講師 (20218770)
加藤 聖子 九州大学, 生体防御医学研究所, 講師 (10253527)
和氣 徳夫 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (50158606)
谷口 俊一郎 信州大学, 大学院・医学研究科, 教授 (60117166)
|
キーワード | カルポニン / アクチン / 癌性腹膜炎 / 卵巣癌 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
前年度までの培養細胞を用いたin vitro実験系で、アクチンフィラメントを調節・制御するカルポニンh1(CNh1)遺伝子を導入した腹膜中皮細胞層が癌細胞の浸潤を抑制すること、卵巣癌細胞自身にCNh1遺伝子を導入すると抗腫瘍効果(抗浸潤・抗増殖)を有することがわかった。そこで本年度は両細胞に同時に遺伝子導入した場合の効果について重層培養法を用いて検討した。癌細胞による中皮細胞層への浸潤は両細胞にCNh1遺伝子を導入した場合、それぞれ片方の細胞のみに導入した場合に比し相加的に浸潤が抑制された。 次に動物を用いた卵巣癌腹膜播種に対するCNh1遺伝子治療の効果を検討した。卵巣癌細胞株をヌードマウスに腹腔内移植すると、走査電顕上、腹膜中皮細胞表面に微絨毛様構造が生じるが、CNh1遺伝子を含むアデノウイルスを投与すると、その様な変化は生じず平坦かつ整然とした配列を保った。ベクターのみアデノウイルス投与時に比し、癌細胞による腹膜播種は抑制され有意に生存期間が延長した。ウイルス投与に起因する副作用評価としてマウス体重をモニターしたが体重減少を認めず、屠殺して腹腔内を観察しても癒着などの変化を認めなかった。 本年度までの結果からもわかるように、カルポニン腹腔内遺伝子療法は同一遺伝子が癌抑制および宿主防御能の増強という二面的効果を有する新しい概念の遺伝子治療と成りうるが、今回、動物実験モデルながらも本療法に明らかな腹膜播種抑制効果が確認されたこと、および重篤な副作用が認められなかったことより、本治療は卵巣癌腹膜播種の治療に臨床応用しうると考えられた。
|