研究概要 |
【目的】最近、ラットのnitrofen誘発性横隔膜ヘルニア(CDH)において肺/体重比がビタミンA投与により増加したとの報告がある。この方法は無侵襲的に肺発育を促進できる可能性があり、今後CDHの胎内治療として期待されている。そこで、ラットのnitrofen誘発性横隔膜ヘルニアにおけるビタミンAの胎仔肺に及ぼす影響を解剖学的および組織学的に検討した。【方法】Sprague-Dawley rat(妊娠期間:22日)にnitrofenを妊娠9日目に経口投与し、21日目に帝王切開を施行した。ビタミンAはnitrofen投与の2日前(前投与群)54匹、当日(当日投与群)68匹および2日後(後投与群)84匹に15,000単位をそれぞれ経口投与した。また、nitrofen投与時にプラセボ(01ive oil)を投与した103匹を対照群とした。さらに、nitrofenを投与しない72匹を正常群とした。そして、各群における胎仔の横隔膜ヘルニアの頻度および各胎仔の肺/体重比や組織学的な肺発育(肺細葉の長さ、分岐回数、肺胞の大きさ)を評価した。【成績】解剖学的にCDH発症が確認されたのは、前投与群19.6%、当日投与群15.3%、後投与群21.3%、対照群63%および正常群0%であった。また、各群における肺/体重比は、前投与群22.6±0.89mg、当日投与群20.9±0.79mg、後投与群21.5±0.79mg、対照群18.0±0.82mgおよび正常群:29.0±0.78mgであった(対照群vs投与群:それぞれp<0.01)。CDH発症例だけに限ると、各群における肺/体重比は、前投与群19.1±0.83mg、当日投与群19.2±0.62mg、後投与群21.8±0.62mg、対照群17.4±0.31mgであった(対照群vs投与群:それぞれp<0.01)。さらに肺の組織学的検討についてもビタミンA投与群では対照群に比べて、肺発育が促進していた。【結論】ラットにおける実験的CDHにおいて、ビタミンA投与は胎仔の肺発育を促進する。
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