研究概要 |
[目的]CD-1マウスの新生仔期にdiethylstilbestrol(D)ならびにgenistein(G)の投与を行うと30%以上に子宮内膜癌(EA)が発生することが報告されている.今回,ヒトEAで変異が多くみられるPTEN遺伝子を改変したmPTEV+/-マウス(mPTEN)を用いて,新生仔期のE投与の影響を検討した. [方法]mPTENと野生型(C57BL/6J)との交配による新生仔に,出生日より5日間連日で皮下にD(1μg/kg/day)(D群),G(50mg/kg/day)(G群),estriol(4mg/kg/day)(E3群)を,また,対照(C群)としてvehicleのみを,野生型と変異型の各群が8匹になるまで投与を行った.投与開始日より12ヶ月後に子宮を摘出し,双角子宮の片側を形態学的観察に,他側をreal time PCR法による種々の遺伝子発現解析に用いた. [成績]野生型ではEAや子宮内膜異型増殖症(CAH)は全群に観察されなかった.変異型におけるEAの頻度は、C群37.5%,D群0%,G群12.5%,E3群0%で、CAHの頻度は、C群75%,D群50%,G群37.5%,E3群25%で,片側子宮の平均異型腺管数はC群21.5±6.1,D群0.8±0.4,G群3.4±2.0,E3群0.3±0.2であった.また,内膜間質の硝子化がD群とG群に,萎縮がE3群に観察された.Epithelial-mesenchymal interactionに関連するTGF-β1と内膜間質形成に関与するHoxa 11の発現の検討では,C群と比較し,D群,G群,E3群でいずれも発現減弱が認められた. [結論]CD-1マウスによる先の報告とは逆に,mPTENではEAの発生の抑制がみられ,同時に内膜間質の硝子化や萎縮が観察され,さらにTGF-β1の発現減弱がみられた.TGF-βfamilyを介した間質による上皮の増殖調節機構が最近注目されており,今回の結果もこの調節機構の変化による可能性が考えられた.
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