研究課題
子宮内膜症は性成熟期女性の約10%に発生し、疼痛や不妊をもたらす慢性疾患である。本疾患は近年増加傾向にあるが、その病因は未だ不明である。本疾患も他の慢性疾患と同様に多因子疾患であり、遺伝因子に環境因子が加わって発症すると考えられている。我々は、学内倫理委員会の承認を得て患者の末梢血DNAの採取を6年前から開始し、毎年症例数が増加して現在までに700名のデータベースを得てきた。これはすべて腹腔内所見を確認して臨床進行期のスコアを詳細に記載したものであり、各症例の精度、情報量が多く、さらに症例数が世界でも最大級である。これを用いて患者-対照研究を行い、主として遺伝子多型の分析を中心的に行うことによって、疾患感受性遺伝子の検索を行っている。子宮内膜症はエストロゲン依存性に増殖・退縮し、免疫系あるいはサイトカインがその発生・増殖に強く関与することが知られている。現在までの研究ですでに論文発表した疾患感受性遺伝子は、エストロゲン関連遺伝子であるエストロゲン・レセプターαおよびCYP19(アロマターゼ)、そして免疫関連遺伝子であるインターロイキン-10およびHLAの一部のハプロタイプである。今回の研究では、免疫関連遺伝子がその中心的役割を担うと予想されたことから、これらの遺伝子多型に焦点を絞って検討してきた。そして、当初の計画どおり、TNF-αのプロモーター領域の遺伝子多型、およびインターフェロンγ遺伝子の遺伝多型が子宮内膜症と関連することを見いだし、一流英文雑誌に発表した。現在さらに免疫系遺伝子であるHLA遺伝子領域について鋭意検討中である。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
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