研究課題
基盤研究(C)
進行子宮内膜癌症例では術後補助治療が必要となる場合も多く、化学療法または放射線療法のいずれを選択すべきかについてのevidenceはまだ得られていない。そこで、腫瘍の個性診断に基づくオーダーメード化医療の確立の指標として、マイクロサテライト不安定性(MSI)が有用であるか否か検索した。1.MSI:(1)子宮内膜癌細胞株および臨床腫瘍材料より抽出したDNAを用い数種類のmarkerをPCR増幅して解析すると、MSI陽性頻度は約35%で、大腸癌の陽性頻度より高い事実が判明した。(2)ミスマッチ修復(MMR)遺伝子のうちhMLH1、hMSH2、hMSH6遺伝子産物に対する抗体を用いた免疫組織化学検索にて、MSI陽性例では有意に高率に蛋白発現低下が認められた。しかし、hMLH1遺伝子変異は1例(MSI陽性内膜癌の6%)にナンセンス差異を認めたのみで、hMLH1遺伝子promoter領域のメチル化はMSI例にて有意に高率に確認されたことより、内膜癌のMSIの主たる要因はhMLH1遺伝子promoter領域のメチル化によると考えられた。2.Histoculture Drug Response Assay(HDRA)法による薬剤感受性検査:殺細胞効果判定にはMMT assayを用いて各検体に対する各薬剤のIC50値を算出し、低感受性群と高感受性群に群別した。体癌MSI陽性15例におけるcisplatin低感受性頻度は93%でMSI陰性群より有意に高く、MSI陽性群がcisplatin低感受性を示す事実を臨床検体を用いて初めて確認した。また、複数の子宮内膜癌細胞株でメチル化されたhMLH1promoter領域を脱メチル化処理すると、cisplatin感受性が改善する事実も確認され、hMLH1遺伝子のメチル化の有無が術後補助療法の選択に重要な情報であることが判明した。
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