研究概要 |
HPVのE2蛋白質はE6・E7遺伝子の発現を調節しているDNA結合蛋白質であることから、ウイルス発癌の機構を解析する上で極めて重要な蛋白質といえる。そこで、E2蛋白質に結合し、その転写機能を阻害するペプチドを単離することを試みた。HPV16型のE2蛋白質を大腸菌で発現させ蛋白質を精製した。このE2蛋白質をプレートに固相化し、任意のアミノ酸配列がファージのファイバー蛋白質に発現しているライブラリーを用いて、E2蛋白質に結合するファージクローンを単離した。その結果、トリプトファンを含むペプチド配列が単離された。そこで、このトリプトファンをアラニンに置換したのち、E2蛋白質との結合性を比較したところ、変異ペプチドでは、その結合能が低下した。さらに,単離されたペプチド配列に核移行シグナルを付加した合成ペプチドを作成し、E2遺伝子の転写活性に及ぼす影響についてルシフェラーゼアッセイ法にて検討したところ、転写活性の低下が認められた。以上のことから、単離されたペプチドはE2蛋白質に結合し、その転写活性を抑制することが判明した。一方、このペプチド配列をもとに塩基配列を発現ベクターに組み込み、細胞内でペプチドを発現させ、転写活性を測定したが、効率よく転写活性を抑制する配列はいまのところ、みいだせていない。この理由としては、細胞内で有効なペプチドが発現されていないことが予想される。以上のことからペプチドを効率よく導入することが現時点では重要と考えている。ところで、E2蛋白質はウイルス複製にも関与しているが、in vitroの実験系の確立が困難とされていた。最近Morgan等がウイルス複製能を測定できる系をあらたに開発した。そこで、Morganとの共同研究により、ウイルス複製能を測定できる系を当研究室にて確立することをめざしている。
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