最近第XII因子欠乏と反復流産、血栓症との関係が注目されている。第XII因子はカリクレイン-キニン系の蛋白であり、utero-placental unitに存在して血液凝固線溶系や妊娠維持に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。既に、不育症患者において第XII因子欠乏症が高頻度に存在する事や、第XII因子に対する自己抗体の存在が報告されている。今回我々は、不育症患者における抗第XII因子抗体の認識部位を検討した。当院不育症外来の患者に対して、インフォームドコンセントのもとで血漿を採取し、第XII因子の活性を測定した。さらに、ELISAとWestern blotにより、第XII因子欠乏患者血漿中の抗第XII因子抗体を測定した。ELISAにて抗体陽性であった患者の血漿を用いてWestern blotで検討したところ、抗第XII因子抗体は第XII因子のheavy chainを認識する事が明らかになった。さらに、第XII因子のアミノ酸配列を文献的に考慮して合成ペプチドを作成し、epitope mappingを施行中である。第XII因子は血小板膜糖蛋白のglycoprotein Ib-IX-V複合体に結合し、トロンビン依存性血小板凝集を抑制することが報告されている。また、その抑制部位は第XII因子のheavy chain上にあると報告されている。今回の我々のデータは、抗第XII因子抗体が第XII因子のheavy chainを認識する事により、第XII因子の血小板抑制作用を阻害し血栓、流産を引き起こしている可能性を示唆するものである。
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