閉経後女性においては低エストロゲン状態などのホルモン不均衡が生じ、狭心症や心筋梗塞および生活習慣病の発生率が上昇する。その背景には更年期以降、冠動脈をはじめとする全身の動脈に付着し動脈硬化に関与する細胞接着分子の量的および質的な変化が関係すると考えられている。とくに、ATPのプリン代謝物であるアデノシンは心微小循環系調節に深く関与し、特に血小板および細胞接着分子の調節にきわめて重要な機能を保持する。本研究にて以下の実績を得た 1.閉経ウサギモデルにおける閉経後アデノシン産生および血小板P-selectin発現の変化 方法:成熟雌ウサギの卵巣を摘出後に閉腹し閉経モデル(n=3)を作成し血液採血しアデノシン濃度を測定。同時に血小板P-selectin発現をFlow cytometryで測定した。 結果:閉経ウサギモデルにおいて血漿アデノシン濃度は減少、血小板P-selectin発現は上昇した。 2.閉経婦人におけるアデノシン産生および血小板P-selectin発現の変化 方法:対象は50歳〜55歳で合併症のない閉経婦人20例、コントロールは合併症のない45歳〜49歳の正常月経周期を有する婦人20例とし、血漿アデノシン濃度および血小板P-selectin発現を測定した。 結果:閉経ウサギモデル同様に血漿アデノシ濃度は減少し、血小板P-selectin発現は上昇していた。 3.総括 閉経後は、血小板および細胞接着分子の調節に重要な役割を保持するアデノシンの減少により血小板の活性化が惹起される可能性が示唆された。
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