研究概要 |
胎盤の分化発達に関与するGCMa/1を含む転写因子が明らかになりつつある現在,これらの転写因子の正常な発達過程での動態と病態における変化について知ることは,病態原因の解明,治療法の開発の点からも重要な課題である。今年度は正常妊婦と妊娠中毒症妊婦の胎盤を使って,GCMa/1のタンパク質とmRNAの動態を調べた。 正常妊婦分娩直後の胎盤でのGCMa/1の発現をモノクローナル特異抗体で調べた。数ヶ所摘出してウエスタンブロットしたところ,どの部位でも弱いながら同等のGCMa/1が検出された。このことを確認するために,胎盤からRNAを調製し,RT-PCRを行なったところ,同様の結果が得られた。GCMa/1は胎盤のどこかの部分に偏って発現していないと考えられ,しかも胎盤機能終了期まで発現し続けていることが確認された。 GCMa/1の発現動態を定量的に調べるために,胎盤から調製したRNAからcDNAをつくり,このcDNAについてreal-time PCRを行なった。定量条件を決めたあと,妊娠中毒症の胎盤から得られたmRNA量を測定した。予備的な段階であるが,妊娠中毒症胎盤のmRNA量は正常に比較して若干低い傾向が見られた。検体数を増やし,正常胎盤との週期の補正が必要であるが,この発現量の差が妊娠中毒症の原因になっているのかも知れない。 GCMa/1のマイクロアレイでの解析を行なったところ,正常妊婦と妊娠中毒症妊婦の胎盤の2群間での比較検定では,有意差は認めなかった。しかしながら,検体数が少ないのが原因かも知れない。
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