研究概要 |
これまで頭頚部癌におけるジアシルグリセロールキナーゼの役割についての研究は国内外を問わず皆無であるため、まずは頭頚部癌の培養細胞を用いた実験を行い基礎的なデータを得ることとした。用いた培養細胞は口腔癌由来の扇平上皮癌が8系統(細胞名KOSC-2 cl3-43,HSC-2,HO-1-N-1,Ca9-22,HSC-3,SAS,SCC-4,HO-1-u-1)、甲状腺癌由来が2系統(細胞名HTC/C3, 8305C)である。ヒトのジアシルグリセロールキナーゼについてはこれまで9つのアイソザイム(hDGK-α、-β、γ、-∂、-η、-ε、-ζ、-ι、-θ)がクローニングされており、これらの遺伝子配列情報をGen Bankから入手しRT-PCR用のプライマーを設計し、各種細胞でのジアシルグリセロールキナーゼアイソザイムのmRNA発現を検討した。各々の細胞でジアシルグリセロールキナーゼアイソザイムの発現パターンは異なっており、これらの違いが癌細胞の増殖能や接着能、抗癌剤に対する感受性などに関与しているのか否か、16年度の検討課題である。また、蛋白レベルでの発現を免疫学的手法で検討する場合には、特異抗体が必須であるが現時点では商品化されたものは無く、この問題の解決策として、研究分担者である後藤薫教授が確立したラットジアシルグリセロールキナーゼアイソザイム(rDGK-α、-β、-ζ、-ι)に対する抗体がヒトのジアシルグリセロールキナーゼにクロスリアクションを示すかどうかウエスタンブロットを用いて解析中である。一定の結果は得られていないが、これらの抗体がヒトのジアシルグリセロールキナーゼアイソザイムを認識することがわかれば、培養細胞のみならず臨床標本における発現を解析することが可能となる。
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