研究概要 |
これまで頭頚部癌におけるジアシルグリセロールキナーゼの役割についての研究は国内外を問わず皆無であるため、まずは頭頚部癌の培養細胞を用いた実験を行い基礎的なデータを得ることとした。用いた培養細胞は口腔癌由来の扁平上皮癌が8系統(細胞名KOSC-2 cl3-43,HSC-2,HO-1-N-1,Ca9-22,HSC-3,SAS,SCC-4,HO-1-u-1)、甲状腺癌由来が2系統(細胞名HTC/C3,8305C)である。ヒトのジアシルグリセロールキナーゼについてはこれまで9つのアイソザイム(hDGK-α、-β、γ、-δ、-η、-ε、-ζ、-ι、-θ)がクローニングされており、これらの遺伝子配列情報をGen Bankから入手しRT-PCR用のプライマーを設計し、各種細胞でのジアシルグリセロールキナーゼアイソザイムのmRNA発現を検討した。各々の細胞でジアシルグリセロールキナーゼアイソザイムの発現パターンは異なっていた。DGKアイソザイムの中でhDGK-ζは様々な臓器にユビキタスに発現し、細胞増殖や分化に関わる因子として注目されているが、今回使用した細胞株の中にはhDGK-ζの発現の多いものと少ないものが認められた。これらの細胞株に対しDGK阻害剤を用いることにより細胞増殖や形態変化に違いがあるか検討した。DGK阻害剤を用いた結果ではhDGK-ζ発現の多寡により細胞増殖やアポトーシスの程度に有意な違いは認められず、他のアイソザイムによる影響も少なからず関与していると考えられた。
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