研究概要 |
IL-4受容体α鎖(IL-4Rα)はアトピー原因遺伝子の一つである可能性があり、喘息患者では遺伝子多型の比率が健常人と異なることが報告されている。我々はスギ花粉症患者を対象として、細胞外領域に存在する50番目のアミノ酸がバリンからイソロイシンに置換される遺伝子多型(IL-4RαIIe50Val)および、細胞内領域に存在する551番目のアミノ酸がグルタミンからアルギニンに置換される遺伝子多型(IL-4RαArg551Gln)を解析したがいずれも健常人と比較して有意な差は認められなかった。しかし、50番目のアミノ酸がイソロイシンホモ型を示すスギ花粉症患者は他の発現型を示す患者と比較してIgE値が高値を示しており、また、発症年齢が低く20歳までに74%が発症していた。次に遺伝子多型が2次発症に与える影響について検討するために4年前にCAPRASTでスギ花粉に対する抗体値がスコア2以上で未発症の症例を対象として、その後の発症の有無についてアンケート調査し、遺伝子多型との関係を調べた。4年前に未発症であった145人中38人が発症していた。これらの症例の遺伝子多型別発症率は、イソロイシンホモ型47.8%、ヘテロ型24.8%、バリンホモ型23.2%とイソロイシンホモ型で高率に発症が認められた。以上の事実は、生後早期にFcεRIβやIL-4Rαの遺伝子多型を調べることにより将来のIgE値の推移や発症をある程度予測できる可能性を示唆している。しかし、アレルギー性鼻炎は多因子疾患であり、1-2個の遺伝子多型をもとに予防医学の理論的根拠を構築するのには無理がある。今後、瑞息など他のアトピー性疾患で注目されているCCR-3,CCR-4、IL-13,CRTH2などの遺伝子多型とスギ花粉症との関係、発症時期との関係について検討し、感作・発症に関して重要な遺伝子多型を絞り込む必要がある。
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