1 無処置ラット(5匹)の蝸牛、内リンパ嚢の観察 (1)HE染色による観察: 蝸牛外リンパ腔には数切片に1個ほどの小円形細胞がみられた。内リンパ嚢の嚢内には浮遊細胞はまれで、上皮下の観察はHE染色のみでは困難であった。 (2)免疫組織化学的検討: 抗ED-1(CD68)抗体、抗IL-1β抗体を用い免疫組織化学的に検討した。蝸牛では数切片に1個ほど外リンパ腔にED-1陽性細胞を認めた。内リンパ嚢上皮下に少数のED-1陽性細胞が観察されたがED-1陽性の嚢内浮遊細胞は観察されなかった。IL-1β陽性細胞は観察されなかった。 2 LPS全身投与ラット(5匹)の蝸牛、内リンパ嚢の観察 LPSの腹腔内投与; 深麻酔下にE.coli(serotype 0127:B8)より抽出したLPS(SIGMA) 1mgを腹腔内投与した。投与後48時間後PLP固定液によって全身還流固定しただちに蝸牛を摘出し脱灰後厚さ4μmの蝸牛、内リンパ嚢凍結切片を作製した。 (1)HE染色による観察: 蝸牛外リンパ腔、蝸牛軸血管叢に1切片に数個の少数の浸潤細胞を認めた。一方内リンパ嚢に明らかな組織学的変化は観察されなかった。 (2)免疫組織化学的検討: LPS腹腔内投与後に外リンパ腔にみられた浸潤細胞は抗ED-1抗体陰性の細胞であった。内リンパ嚢には抗ED-1抗体の染色結果の変化を認めなかった。LPS投与後の蝸牛、内リンパ嚢において1L-1βの発現は、らせん靱帯も含め、蝸牛浸潤細胞、内リンパ嚢内、上皮下ともにみられなかった。 以上より現時点では蝸牛への細胞浸潤は内耳のinnate immunity活性化によるのかLPS投与による全身の血管透過性亢進によるのか不明である。サイトカインの発現を観察するため動物をマウスに代えて検討を継続する。またLPSの内耳への到達が確実な投与方法も検討中である。
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