研究概要 |
今回の研究において,ヒト嗅粘膜を採取し,免疫組織化学的な検討を行うとともに,動物嗅細胞を用いた,培養実験系の確立を目指した準備を行った。 ヒトの嗅粘膜は鼻腔の深部の非常に狭い部位に存在し,直上は薄い筋板を経て頭蓋内であるため,票補運の採取は決して容易ではない。数例の嗅覚障害患者から同意を得て嗅粘膜を採取し,パラフィン包埋標本を作製し,組織学的検討を行っている。その結果,摘出標本に嗅細胞が存在するもの,嗅細胞が存在しないもの,上皮が採取時に脱落して評価ができなかったものに分かれた。嗅細胞が存在するものについては免疫組織学的検討を行い,神経成分の存在を確認できたが,本研究のテーマである分化に関与する因子については有意な結果が出なかった。嗅細胞が存在しない上皮については,嗅覚障害により嗅細胞が変性脱落したものか,採取部位が嗅上皮でなかったのかという問題が含まれている。採取時に上皮が脱落する問題も含め,より安全でなおかつ確実な組織採取を行うために,これまで使用してきた中野式生検鉗子を改良した,新しい鉗子を製作し嗅粘膜の採取を試みたが,十分な嗅粘膜を安定して採取することは困難であった。 同時に動物を用いた嗅粘膜の組織培養実験も行ったが,残念ながら培養系の確立までにはいたらなかった。
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