これまでの検討結果から、三重大学医学部耳鼻咽喉科外来で免疫療法(減感作療法)を行ったアレルギー性鼻炎患者を対象としたヒスタミン遊離試験で、ヒスタミン遊離率の抑制が効果判定に有効な検査方法であることを示した。好塩基球からのヒスタミン遊離は、従来から考えられているリンパ球を介した免疫誘導や、IgGによる遮断抗体による免疫誘導による機序とは全く異なる機序が考えられる。この結果はこれまで考えられているTリンパ球を中心とした機序とは異なる展開が考えられる。しかも、ヒスタミン遊離試験は本邦では保健適応のある検査法として末梢血で検討可能である。このことは、患者負担も軽く、広く臨床応用可能な方法である。平成17年度は、これまでの検討患者の追跡を行い、免疫療法が良好な臨床経過を維持していることを証明した。スギ花粉が大量飛散した平成17年春の症状について、免疫療法を行った患者と初期治療をおこなった患者で無記名のアンケート調査をおこなったところ、治療の満足度は免疫療法群で有意に高かった。その臨床効果はスギ花粉飛散期の即時相症状に有意によい結果であったが、ヒノキ花粉飛散期には有意でなかった。さらに、スギ花粉の大量飛散年、中等度飛散年、少量飛散年で免疫療法と薬物治療の医療経済を比較しても免疫療法の医療経済効果は高かった。即ち、免疫療法は臨床効果と医療経済上も有益な治療法であり、その効果の機序及び判定にヒスタミン遊離試験が有用であると考えられる。
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