研究概要 |
慢性上気道疾患では、上皮の粘液産生細胞が細菌やサイトカインなどの刺激に応答してムチン遺伝子の発現を亢進させることによって、鼻漏や耳漏などの粘液の過分泌がもたらされる。ムチンは粘液の主要成分であり、ムチンをコードする遺伝子は現在までにMUC1からMUC13までの14がよく知られており、このうちで気導においてはMUC2とMUC5ACが主要なムチンであることが明らかになっている。今年度は、MUC2とMUC5ACのムチン遺伝子が各種の分泌刺激物質によりいかなる細胞内伝達系を介して制御されているのかを検討した。MUC2とMUC5ACを発現することが知られているHM3細胞株を用いて、培養細胞に各種転写因子が結合するとリポーター(ルシフェラーゼあるいは分泌型アルカリフォスファターゼ)を発現するプラスミドを組み込み、刺激物質を加えて培養上清と細胞を回収し、アッセイを行って、各種粘液産生刺激物質がMUC2あるいはMUC5AC遺伝子を発現する際にどの経路を介するかをスクリーニングした。MUC2産生細胞株でリポポリサッカライドを、MUC5AC産生細胞株でインターロイキン13,9、血小板活性化因子、アデノシン三リン酸を用いて、スクリーニングを行った。リポポリサッカライドでは、NFkBに関連した細胞内伝達系を介していた。インターロイキン9では、MUC5ACの産生亢進が見られなかった。インターロイキン13では、PKC、Caに関連した細胞内伝達系の関与が、血小板活性化因子ではMAPK/JNKに関連した細胞内伝達系の関与が、アデノシン三リン酸ではJNK/PKA/CREBに関連した細胞内伝達系の関与が、それぞれ示唆される結果となった。今後は、転写因子の活性化することや特異的阻害剤で伝達系路が遮断されることなどを確認する予定である。
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