1)マウス蝸牛の摘出 6週齢の雄マウスを断頭し、側頭骨を取り出し、RNA-later(Ambion社、RNA Stabilization Solution)を含む35mmデッシュの中においた。蝸牛骨壁と残存する結合組織を除去して、蝸牛軸およびコルチ器を摘出した。頂回転部分と基底回転部分の2つに分割し、それぞれをRNA-laterが1mlが満たされたプレートに移した。なお、氷上にて全ての操作を行った。 2)蝸牛回転別のTotal RNAの抽出 Qiagen社のRNasy spin columsを使って、Total RNAを精製した。RNAの質および量を最大限に抽出するために、2mlのエッペンドルフチューブに600μlのRLT BufferとともにRNA-later中に保存した組織を移し、ポリトロン・ホモジナイザーで組織が粉砕されるまでホモジナイズした。その後は、キットの手順どうりに精製した。 3)蝸牛回転別に抽出したTotal RNAの量と質の評価 吸光度や変性ゲルによるRNAの電気泳動法により確認するには、濃度4〜40μg/μlのRNA量が必要になる。2個の蝸牛から摘出されるTotal RNA量は1μg以下と報告されていて非常に収量が少ないため、今回は5ngのRNA量でも正確に量と質を判断できるAgilent 2100 bioanalyzerを用いて、RNA 6000 Nano Assey法により評価を行った。 その結果、頂回転側からは濃度67.41ng/μlで総量50μl、基底回転側からは濃度117.33ng/μlで総量50μlがそれぞれ抽出できた。Total RNA量としては、頂回転=3.37μg、基底回転=5.87μ9のRNAが抽出可能であった。抽出したtotal RNAのエレクトロフェノグラムより、18Sと28SのリボゾームRNAを反映する2点のピークが確認されており、非常に良質のRNAが抽出可能であった。今後、このRNAを用いて、蝸牛の周波数選択性に関連する分子をDNAマイクロアレイにより解析する予定である。
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