研究概要 |
メニエール病の病態が内耳自己免疫あるいは浮腫との考えから、現在までに臨床の場ではステロイド全身、中耳腔、内リンパ嚢局所投与が試みられ、一定の成果が得られてきた。昨年度の本研究では、これらのメニエール病に対するステロイド治療の治効機序を、ラットを用いた分子生物学的アプローチで明らかにし報告した。 本年度はそれらの結果を踏まえて、メニエール病患者に対する内リンパ嚢ステロイド挿入術の前後で血中抗利尿ホルモンの変化を検討し、その値が術後有意に低下することを明らかにした。さらに術後その低値が持続した患者のめまい・聴力成績は長期的に良好であることを明らかにした。 本年度は上記の臨床研究と並行して、前世紀末にクローニングされた侵害受容体TRPVファミリーの内耳での遺伝子、タンパク発現を検索した。TRPV1,2,3,4の蝸牛、前庭神経節における発現を証明した。さらに蝸牛、前庭の末梢感覚細胞におけるTRPV1,4の発現も示唆された。とくにTRPV4は侵害刺激のうちでも浸透圧刺激に対して反応する受容体であり、内耳浸透圧の恒常性さらにはメニエール病内リンパ水腫の発症機序にも関与している可能性が示唆された。
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