近年、副鼻腔炎の病態にも鼻腔のアレルギー性炎症の影響を受けていると考えられる症例が増加してきている。これらのものは粘膜への顕著な好酸球浸潤を特徴とし、薬物療法あるいは手術療法後の治癒過程にも抵抗性を示す場合が多く、疾患の難治化因子として大きな問題となっている。 今回の研究において我々は、 1)臨床的検討として鼻アレルギー合併の副鼻腔炎症例では、OMC(ostiomeatal complex)を中心とした領域のみならず、副鼻腔各洞全体に及ぶ粘膜病変を呈しやすく、かつ局所好酸球浸潤程度と深い関係が存在することを解明した。 2)副鼻腔粘膜の分子生物学的解析では、これらの難治症例は炎症性サイトカインであるIFN-γ mRNAの低下とGM-CSF、IL-5、eotaxin mRNA発現の亢進が観察されると同時に、CD4陽性Th細胞subsetの中でCCR4(Th2)陽性細胞数の増加と、CXCR3(Th1)細胞/CCR4細胞比の低下を確認した。 3)好酸球を誘導する環境を形成する因子として粘膜構成細胞における転写因子活性に着目した。すなわちヒト培養副鼻腔上皮細胞モデルを用い、細胞内転写因子であるNF-κBの活性化応答の変化と、ステロイド剤による抑制効果について検討を行った。培養細胞をTNF-αで刺激することにより、早期に転写因子活性の有意な上昇が確認され、また本作用はステロイドの前投与により濃度依存的に抑制可能であった。免疫組織学的な観察でも、p50 subunit並びにglucocorticoid receptorの発現と核内移行の所見が観察された。これらの結果は、副鼻腔粘膜における上皮構成細胞がeffector cellとして好酸球浸潤に深く関与していることと、外用ステロイドなどによるその制御が病態治療に有用であることを示している。
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