研究課題/領域番号 |
15591819
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中谷 宏章 高知大学, 医学部, 助教授 (60172334)
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研究分担者 |
浜田 昌史 高知大学, 医学部, 助手 (20325426)
山河 和博 高知大学, 医学部, 助手 (50335949)
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キーワード | 顔面神経麻痺 / 麻痺モデル動物 / 活性酸素 / ラジカルスカベンジャー / 神経再生 |
研究概要 |
平成15年度の実験結果により、ラディカルスカベンジャーであるedaravoneが顔面神経麻痺モデル動物における麻痺発症率を有意に低下させること、edaravone投与動物ではフリーラディカルの産生が抑えられていることが明らかとなっだ。そこで、edaravone非投与動物と投与動物における組織変化をさらに詳細に検討した。 1.実験動物: ハートレイ系正常白色モルモットを用い、中硬膜動脈を遮断することによって麻痺動物を作成。このうち、麻痺程度(3+)以上の高度麻痺動物を対象とした。 2.形態学的評価: 中硬膜動脈遮断による高度麻痺モデル動物をedaravone非投与群と麻痺発症当日より1週間edaravone(3mg/kg/日)投与の2群に分け、麻痺の回復経過を見るとともに、1ヵ月後の組織の変化を検討した。組織の観察にはルクソールファーストブルー・HE3重染色を用いた。 3.結果: 表情筋の運動はedaravone投与群では3週目から、非投与群では1ヶ月目(標本作成直前)から観察された。顔面神経の組織学的変化は、乳突部においてはedaravone投与の有無に関わらず神経障害は高度であり、髄鞘の染色性低下や脱髄を伴う神経変性所見がみられた。一方、膝部では両群ともに髄鞘の染色性が低く、神経変性の残存が伺われたが、edaravone投与動物では非投与動物に比べ髄鞘の染色性が回復しており、神経の再生過程であることが伺われた。膝部神経節の細胞体は非投与では高度の変性がみられたが、投与動物では明確な変性所見はみられなかった。 考察: edaravone投与動物では神経障害が軽度で、神経再生反応がより早く生じている。これまでの検討から麻痺モデル動物には顕著なフリーラディカルの産生が確認されるが、edaravone投与動物では産生は認められないことが分かっており、edaravoneは顔面神経麻痺の虚血と浮腫を抑制し、神経再生を促進させていると考えられる。現在、ベル麻痺やハント症候群の高度麻痺例では保存治療による神経変性の阻止は不可能であるが、今回の検討によりedaravoneは高度麻痺例においても虚血と浮腫による悪循環の抑制、神経再生の促進に効果があると考えられる。
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