研究概要 |
電気的聴覚刺激による聴覚中枢賦活をfunctional MRI(fMRI)で評価する臨床検査法を樹立して、高度難聴者の後迷路機能評価,ひいては人工内耳の客観的適応検査法としての臨床応用を目指した。先ず,電気聴覚刺激装置として本邦で臨床使用可能な2機種のうち,MRI検査室内での蝸牛電気刺激検査に有利なメドエル社製遠隔操作型electroaudiometerの実用化を琉球大学病院にて達成した。さらに我が国で広く普及しているコクレア社製promontory stimulatorを用いた蝸牛電気刺激検査をMRI検査室での利用を可能とするために、長さ4mのカーボン電極を作成した。これにより刺激装置本体をMRI静磁場外に設置することが可能となり,fMRI検査への応用が達成された。 脳賦活(刺激)形式はON-OFFパラダイム(OFF;電気刺激なし20秒、ON;電気刺激20秒)を用いて5回連続して行った。刺激閾値は検査直前に音感覚を得られる快適閾値の電流量を測定した後に快適レベルよりやや高い閾値で蝸牛電気刺激を行った。得られたデータは同時にSPMにても統計処理・画像化を行った。成人の両側高度難聴者の人工内耳術前検査として本研究に同意が得られた4例について、電気刺激下のMRI検査を行った。electroaudiometerを使用した2例、promontory stimulatorを使用した2例、計4症例について、MRI室内にて安全に蝸牛電気刺激が実施でき、fMRIにて被験者の一次聴覚野領域が賦活される所見が認められた。 これらのことから、いずれの電気聴覚刺激装置を用いてもfMRIを用いた客観的後迷路機能の評価が可能であることが確認された。本研究が人工内耳の客観的適応検査法の基礎を築くものとして今後の臨床応用が期待される。
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