研究概要 |
1.疑核運動神経細胞の単離技術の確立 蛍光神経トレーサーDiIをラット内喉頭筋に注入し、10日後標識された疑核運動神経細胞を、蛍光実体顕微鏡下にマイクロマニュピレーターを用いてトリミングし,標識細胞を単離回収することに成功した。 2.疑核単一運動神経細胞レベルにおけるPCR定量 DiIをラット内喉頭筋に注入し、10日後に反回神経を切断。一定期間の後に標識細胞を単離回収し、定量PCR法により神経突起伸長関連分子群の1つであるGAP-43mRNAの発現を単一細胞レベルで定量した。GAP-43mRNA発現レベルが反回神経切断後7日目で,非切断側に比べ約8倍上昇していた。この結果は,in situ hybridizationによる解析結果と致すると考えられた。 単一細胞を用いた遺伝子解析は,脳神経では顔面神経核や舌下神経核を用いての報告があるが,神経障害モデルを使用した疑核での報告はない。本法は従来困難であった疑核のみを扱う遺伝子解析のみならず,疑核のうち,特定の筋へ投射する支配神経に対象を絞っての遺伝子解析を可能としうる優れた方法であると考えられた。今後,声門開大筋と声門閉鎖筋群との遺伝子発現の比較も可能となれば,以前より問題となっているそれぞれの筋の易傷性の違いを解き明かすきっかけを与えてくれる可能性がある。
|