研究概要 |
Wistar系ラットに対して、Vasopressin投与後経時的に聴覚閾値をABRよって測定した。その結果多くのラットで投与後60〜120分で一側の聴覚が低下することが確認された。加えて低下した聴覚はその後210分までに回復することがわかった。この反応は実際のメニエール病と類似した反応であり非常に興味深い。 日常の臨床においてメニエール病患者ではその発作前はストレス要因が強く、水分摂取が少ない例が多いため、以下の解析を行った。すなわちVasopressin投与前、24時間水分の摂取を制限した後にVasopressinを投与することである。その結果、投与後10-30分後に一側の聴覚が低下していた。 このことは脱水によってV-2 recepterをもった内耳膜迷路細胞ではAQP-2の発現準備状態が形成され、そこにVasopressinを投与することにより、ただちにAQP-2が細胞膜に移動して内リンパ水腫が形成されたものと考えられた。これらの研究結果から内リンパ水腫の発生にVasopressin, V-2 receptor, AQP-2が関与していることが確認できたが、聴覚低下のメカニズムは不明であり、次の実験を行った。 Wistar系ラットを用いArg-Vassopressin投与による聴覚低下動物モデルを腹空内投与すると同時に蝸牛内リンパ電位(EP)を経時的に測定した。Wistar系ラットに対して1)0.000002units/g、2)0.0002units/g、3)0.02units/gのArg-Vassopressinをそれぞれ投与した結果、2)、3)の投与量において、投与後約10分でEPは90mV(投与前)から40mV(投与後)に低下した。この低下は投与後30分で再び90mVまで回復する場合が存在した。このEPの低下が聴覚の低下の1つの要因になるものと考えられている。
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