研究概要 |
1.慢性副鼻腔炎患者の中鼻道粘膜表層Eosinophil cationic protein濃度と血中Eosinophil cationic protein濃度の高値の症例では、高率に嗅覚障害を呈していた。また嗅覚障害改善時には、血中、中鼻道粘膜表層ECP濃度はともに低下した。この結果から嗅粘膜における好酸球浸潤の増減と嗅覚障害との関連が示唆された。 2.New Zealand White Rabbitと細菌(肺炎球菌serotype 3、黄色ブドウ球菌V8、107-109CFU)を用い実験的副鼻腔炎モデルを作製後、細菌接種後5日より、Bowman腺、粘膜上皮、細胞表面にてConAの陽性化、SNAの陰性化が認められた。電顕的にもConAの陽性化、SNAの陰性化が見られた。接種後12週以上経過し、光顕上で炎症所見の改善の認められたものではBowman腺、粘膜上皮、細胞表面にてConAの消失、SNAの陽性化が観察され、正常染色パターンと同様な結果が得られた。 3.嗅覚障害を伴う慢性副鼻腔炎の嗅粘膜で細胞表面、ボーマン腺のMAA強陽性像や、SNA, PNA, UEA-1、シアルダーゼ処理後PNA染色でボーマン腺、支持細胞、細胞表面で陽性像が観察され、粘液の粘性の増加やシアル酸の分泌増加が示唆された。手術後、慢性副鼻腔炎治癒例の一部の嗅粘膜上でボーマン腺のMAA、PNA染色、UEA-1の減弱が認められ、粘液の粘性とシアル酸分泌の正常化が予想された。 4.兎実験的副鼻腔炎モデル時の嗅粘膜を嗅粘膜上皮と繊維芽細胞や脳アストログリアの再構成による嗅粘膜の三次元培養を試みている。しかし、現在まで嗅細胞は培地の中では、抗体を用いた嗅細胞の確認は数日間のみであり、明らかな嗅細胞のcell lineの確立には至っていない。
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