従来、検査方法が確立されていなかった球形嚢・下前庭神経系の新しい機能評価法として前庭性誘発筋電位(vestibular-evoked myogenic potentials:以下VEMP)が注目されている。VEMPの臨床応用には未だ不明な点があるが、広く臨床応用が行われるようになっている現在、基礎的な研究のbackupが急務である。 本研究の目的は、前庭神経から単一神経ユニットで記録を行い臨床応用上の不明な点を明らかにすることであった。まず蝸牛破壊モルモットの作製を行った。以前より報告されたamikacin 450mg/kgを14日間筋肉内投与し、1ヶ月後に蝸電図を行ったが、蝸牛は破壊されず、倍量のamikacin 900mg/kgを14日間筋肉内投与したすると蝸牛を破壊することはできたが、前庭系も破壊されたと考えられた。さらにamikacin 450mg/kgおよび700mg/kgを14日間筋肉内投与したが、蝸牛を破壊できなかったため音響外傷による蝸牛破壊を試みた。115dBのwhite noiseを12時間負荷したが、蝸牛の破壊を十分に行うことはできなかった。以上より当施設におけるamikacinあるいは強大音による蝸牛の破壊は困難と考え、小脳を吸引し、聴神経を露出し、タングステン電極にて、刺激間隔の影響および刺激周波数の影響を検討した。さらにモルモット聴皮質を露出し、耳鳴を誘発するとされているキニンおよびサリチル酸を投与し8チャンネルで単一神経記録を行った。今後、動物の数を増やし2種類の薬剤による変化を検討していく。 併行して行っていた臨床検討では前庭神経炎、ハント症候群、内耳道狭窄症、突発性難聴患者においてVEMPを記録・検討した。さらにVEMPに対する年齢の影響についても報告し、加えて実験的に作成した内リンパ水腫モルモットにおけるCAP adaptationの変化についても報告した。
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