TdT-mediated dUTP-biotin nick end labeling (TUNEL)法による死細胞の研究で陽性死細胞の中にapoptotic dyingcell (以下ADC)とnon-apoptotic dying cell (以下NADC)と判定される細胞が存在していることが明らかになっている。本研究では内耳形態変化が最も多く、自然細胞死が高頻度に発現する胎生12日目のICRマウスの内耳を使用し、陽性死細胞の中でADCとNADCの存在の比率を明らかにした。またコントロール群(n=15)と内耳毒性を有するcis-diammine-dichloroplatinum (CDDP)を母体に投与した群(n=15)との胎生マウスの内耳組織のADCとNADCの比率を比較検討した。コントロール群においてADCは90%であり、NADCは10%であった。 またCDDP群ではADCは70%であり、NADCは30%であった。光学顕微鏡で観察したADCおよびNADCがClarkeの死細胞分類ではtype1(アポトーシス)、type2(自己貧食性細胞死)、type3A(非ライソゾーム性崩壊)、type3B(細胞質型細胞死)のいずれに分類されるかを、光学顕微鏡で使用したほぼ同一切片にて検討した。ADCはtype1であり、NADCはtype2の細胞であった。type3Aおよび3B細胞は存在しなかった。これらの結果によりADCは分裂一増殖が盛んな発生期に必須であり、NADCの増加は内耳毒性に対する生体防禦反応と考えられた。今後症例数を増やし更にADCおよびNADCの生物学的検討が必要である。
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