研究概要 |
ニューロフィラメント重鎖(NF-H)リン酸化を指標として網膜神経節細胞障害が効率よく検出できるかどうかを検討した。ラットの片眼の上強膜静脈を焼灼して持続的な中等度の眼圧上昇モデルを作成した。眼圧は圧トランスデューサーにてキャリブレーションしたトノペンを用いて測定した。もう片眼はシャムオペレーションを行って比較対照とし、両者の比較を行った。まず、確実に本モデルによる網膜神経節細胞障害が、このNF-Hリン酸化を指標として定量できるかどうかを検討するために、眼圧上昇3ヶ月後及び6ヶ月後の時点において過剰量の麻酔薬にて安楽死させ、眼球を視神経とともに摘出してNF-H抗体であるNF-200とSMI31によって染色した。NF-200はリン酔化の有無にかかわらずNF-Hと反応し,SMI31はリン酸化NF-Hとのみ反応するため,この両者を用いることで,NF-Hの半定量およびリン酸化状態の半定量が可能と考えた。それぞれの抗体との反応性を視神経,乳頭,視神経網膜各部位で対側コントロール眼と比較検討した。その結果、本法によって、ある程度までの程度において網膜神経節細胞およびその軸索障害の程度を判定することが可能であったものの、免疫組織染色では定量化が困難であり、再現性ある実験系を確立するためには不十分であることが明らかとなった。そのため、次に、NF-Hおよびリン酸化NF-HをELISAにて定量することにより、より定量的な指標を確立することを試みた。ラットの網膜、視神経から蛋白を抽出し総NF-H量、リン酸化NF-H量の測定を行ったところ、ラット1本視神経、網膜の半分量を下限値として、NF-H量が測定できるELISA系を確立した。
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