臨床的に白内障術後の前嚢収縮と後発白内障の関連について検討した。術後炎症が高度な症例では、各種サイトカインの産生により水晶体上皮細胞の増殖が促進されるため、前嚢収縮や後発白内障が高度となることが考えられた。そこで、124例124眼で術後炎症と前嚢収縮、後発白内障について検討したところ、術後炎症と前嚢収縮の程度には関連が見られたが、後発白内障との間に関連は見られなかった。 次に糖尿病眼で後発白内障の程度と前嚢収縮の程度との関連について検討したところ、その二者の間には相関は見られず、これらのことより、白内障術後の前嚢収縮と後発白内障はその原因が、水晶体上皮細胞に起因するが、両者の相関が見られなかったことにより、その機序は異なることが推察された。 実際に白内障術後の前嚢収縮や後発白内障の予防のために、水晶体嚢拡張リングを白内障手術中に挿入してみたが、その効果は認められなかった。 糖尿病眼における水晶体上皮細胞の形態学的特徴については現在研究途中である。方法としては白内障手術時に得られた前嚢切片より水晶体上皮細胞を直接観察すると共にサイトカインであるインターロイキン1とTGF-β抗体にて染色を行い、糖尿病眼と非糖尿病眼を比較することとした。また、その水晶体上皮細胞を培養し、各種サイトカインの活動性を調べることとしている。
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