研究概要 |
糖尿病黄斑浮腫の発症に関与する分子を蛋白質レベルで網羅的に明らかにするため、昨年度に引き続き、糖尿病黄斑浮腫症例の硝子体プロテオーム解析をおこない、発現が有意に上昇または低下している蛋白質の同定、定量をおこなった。 糖尿病黄斑浮腫症例の硝子体液を採取し、二次元電気泳動により分離した。SYPRO Ruby染色によりプロテオームの可視化をおこない、ゲル上で対照群との比較し、黄斑浮腫検体に特異的に発現しているスポット、著しい発現の増減がみられるスポットの検出を試みた。PD-Quest(BIO-RAD)で2倍以上の吸光度差がでたものを検出すると、8個は糖尿病黄斑浮腫群で有意に上昇し、1個は減少していた。上昇が見られたスポットを切り出し、ゲル内消化して蛋白質を抽出し、質量分析をおこなった結果、PEDF, ApoA-4,ApoA-1,Trip-11,PRBP, VDBPの6つの蛋白質が同定された。このうちPEDFに関し、ELISA法にて定量し、対象群と比較をおこなったところ、非糖尿病黄斑浮腫群では0.83+/-0.60μg/mlであったのに対し、糖尿病黄斑浮腫群では2.03+/-0.50μg/mlと有意に上昇していた(p=0.02)。一方、非糖尿病黄斑浮腫群にのみ見られたスポットを解析した結果、ApoHが同定された。糖尿病黄斑浮腫におけるこれらの蛋白の正確な役割は未だ不明であるが、脂質輸送に関与する蛋白質が多く見られ、その他、新生血管の抑制因子も含まれていたことは興味深い結果である。
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