目的:Arix遺伝子は、脳幹の動眼神経核や滑車神経核に発現し、近年、先天外眼筋線維症2型の原因遺伝子として同定された。先天上斜筋麻痺は時に家系内に集積し、上斜筋腱萎縮や欠損もみつかり、遺伝的背景も考えられる。先天上斜筋麻痺は、先天外眼筋線維症の軽い臨床型ではないかという仮説に基づいて、先天上斜筋麻痺患者でのArix遺伝子変異を調べた。 方法:先天上斜筋麻痺患者13人と正常人54人の末梢血10ccから白血球を分離し、核DNAを抽出した。Arix遺伝子の3つのエクソンをPCRによって増幅し、塩基配列を決定した。対象者には、父と娘がともに先天上斜筋麻痺である家系も含まれる。 結果:上斜筋欠損の患者1人では、一番目エクソンの非翻訳領域でT7C、プロモータ領域でC-44Aのヘテロ変化が、DNAの同一鎖上でみつかった。上斜筋萎縮のない別の患者1人では、一番目エクソンの非翻訳領域でC76G、プロモータ領域でC-9Aのヘテロ変化が、同一鎖上でみつかった。家系内で先天上斜筋麻痺を呈した父と娘では、一番目エクソンの非翻訳領域でのG153Aが、共通のヘテロ変化としてみつかった。このG153A変化は、正常人4人でもみられた。なお、正常人では、これ以外の変化はなかった。 結論:Arix遺伝子変異は、先天上斜筋麻痺の遺伝的危険因子である可能性がある。
|