研究概要 |
New Zealand白色兎の角膜実質内に臨床分離株の緑膿菌(2X10^4CFU)を接種し、経時的(3,9,12,15,18,24,72時間)に眼摘を行い、matrix metalloproteinase (MMP) -2,MMP-9およびtissue in hibitor of MMP (TIMP) -1,TIMP-2の発現を免疫染色にて検討した。さらに、経時的に角膜切除を行い、角膜中に産生されるMMPなどのプロテアーゼをカゼインやゼラチンを基質としたザイモグラフィーで解析した。また、角膜内に発現されるTIMP-1,-2をELISAにて測定した。さらに、MMP-2,MMP-9,TIMP-1およびTIMP-2のmRNA発現をRT-PCRにて解析した。その結果、ザイモグラフィーではMMP-2は接種早期より検出され、その後殆ど変化がみられなかったが、MMP-9は接種15時間後より検出され72時間に向け、増強し、活性型も検出された。また、接種18時間以降に25kDaのカゼイナーゼが検出された。免疫染色では、MMP-2は接種早期から角膜実質細胞に染色像を認め、一方、MMP-9は角膜細胞にも染色性が認められたが、接種15時間以降に主として浸潤した好中球に強い染色像を認め、経過とともに増強した。TIMPでは、TIMP-2は全経過を通じて検出限度以下であったが、TIMP-1は接種15時間より検出され、経過とともに増強した。MMP-2およびTIMP-2 mRNAの発現は初期よりみられたが、ほぼ一定で、一方、MMP-9,TIMP-1mRNAは感染24時間以降に発現が亢進した。 次いで、炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,TNF-α)およびケモカイン(IL-8,MCP-1)の発現亢進が主として炎症細胞(好中球やマクロファージ)において免疫染色およびELISAにて確認された。また、これらのmRNAの発現がRT-PCRにて確認された。 これらの結果はウサギにおける実験的緑膿菌性角膜炎において、主たる潰瘍形成の要因の一つはMMP-9(活性型)であり、その由来として角膜細胞よりも浸潤してくる炎症細胞(大半は好中球)が考えられた。炎症細胞浸潤には炎症性サイトカインやケモカインが関与しており、また、MMPの発現亢進にも関与していると考えられ、最終的にはMMP/TIMPのバランスが崩れて(MMPが相対的に大)潰瘍形成を生じると考えられる。
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